平安時代の貴族たちの恋愛や結婚は、現代の私たちにとってはとても異質に感じられるものです。特に、夫婦が別居して夫が妻の家を訪ねるという「通い婚」は、今では考えられないような婚姻形態です。
では、なぜ平安時代の貴族たちは通い婚を行ったのでしょうか？また、通い婚の中でどのような恋愛や生活を送っていたのでしょうか？
この記事では、平安時代の中期に活躍した一条天皇や藤原道長を例にとって、通い婚の歴史や仕組み、影響などを紹介していきます。
通い婚の起源は縄文時代まで遡り、奈良時代に確立しました。
通い婚の起源は、縄文時代まで遡ると言われています。
縄文時代の人々は、小さな集団で生活しており、同じ一族内で結婚相手を見つけることが難しかったため、外部の男性が女性の家を訪ねるという形で交流を深めていました。
このとき、男性は女性の家に泊まることはせず、自分の一族の家に帰っていました。このような結婚スタイルが、後の通い婚の原型となったと考えられています。通い婚が、貴族の間で確率したのは奈良時代からと言われています。
通い婚の手順とルール
通い婚の手順は、大まかに以下のようなものでした。
- 男性が女性に気に入ったら、和歌でラブレターを送る
- 女性が返事を出したら、手紙のやり取りを続ける
- 男性が女性の家を訪ねて、すだれ越しに会って話す
- 男性が女性の寝室に忍び込んで関係を持つ
- 男性が三晩連続で通って関係を持ったら、結婚成立とみなす
このように、通い婚は、和歌や手紙のやり取りが重要な役割を果たしていました。和歌は、相手の性格や感性を知る手段で恋愛の表現方法として極めて重要なアイテムでした。
手紙は和歌だけでは伝えきれない熱い思いや情景を伝える手段で、恋愛の進展の最終兵器でした。そのため、平安時代の貴族たちは、和歌や手紙の上手さで相手の魅力を判断し、恋愛の成否を決めていました。
通い婚は、男性が女性の家に通うときは、夜にこっそりと行くことがほとんどです。これは、女性の家の中を堂々と歩くことができるのは、結婚が成立した後だけだったからです。また、男性が女性の家に泊まるときは、朝が来る前に帰ることがお決まりでした。
これは、夫婦が同居しないことで、男性が他の女性とも関係を持つことができるようにするためだったと言われています。
平安時代の中期には、夫婦が別々の邸宅に住み、夫が妻の家に通う形式の結婚スタイルが貴族の間で確定し、通い婚は、貴族の恋愛や政治のみと留まらず、貴族の女性の地位の向上や、家族の血縁関係の重視など大きな影響を与えました。
通い婚の特徴
通い婚の特徴は、以下のようにまとめることができます。
- 夫婦は別々の邸宅に住み、夫は妻の家に通う。夫は妻の家に泊まることもあるが、常にそこに住むわけではない。
- 妻の家は、妻の父親や兄弟などの男性親族が管理する。夫は妻の家に入る際には、妻の親族の許可や歓迎を得る必要がある。
- 夫婦の間に生まれた子供は、妻の家に属する。子供は妻の姓を名乗り、妻の家の財産や地位を継承する。夫は子供に対して親権や責任を持たない。
- 夫は妻以外にも、他の女性との関係を持つことができる。妻も夫以外の男性との関係を持つことができるが、その場合は秘密にする必要がある。
- 夫婦の関係は、恋愛や情熱よりも、政治的な利害や家族の意向によって決まることが多い。夫婦の仲が悪くなっても、離婚することは難しい。
通い婚の魅力
通い婚は、平安時代の貴族の結婚形式として、長く続きましたが、やがて衰退してきます。しかし、通い婚は、現代の人々にとっても、魅力的なものとして残っています。通い婚の魅力は、以下のようにまとめることができます。
- 通い婚は、夫婦の自由と個性を尊重する。通い婚では、夫婦は別々の邸宅に住み、互いに干渉しない。夫婦は、自分の趣味や仕事や友人との付き合いを楽しむことができる。夫婦は、自分の意見や感情を素直に表現することができる。
- 通い婚は、夫婦の恋愛と情熱を維持する。通い婚では、夫婦は常に一緒にいるわけではない。夫婦は、互いに会うたびに、新鮮な気持ちになることができる。夫婦は、互いに想い合うことで、恋愛感情を高めることができる。
- 通い婚は、夫婦の家族との関係を良好にする。通い婚では、夫婦はそれぞれの家族との絆を大切にする。夫婦は、自分の家族の助けや支えを受けることができる。夫婦は、相手の家族との交流を通じて、理解や尊敬を深めることができる。
以上のように、通い婚は、平安時代の貴族の結婚形式として、多くの魅力を持っていました。通い婚は、現代の人々にとっても、参考になるものと言えるでしょう。通い婚は、夫婦の幸せのために、柔軟に考えることの大切さを教えてくれます。通い婚は、貴族の文化や歴史を知ることで、より理解することができます。通い婚は、平安時代の貴族の恋愛や政治を豊かにしたものです。通い婚は、平安時代の貴族の魅力の一つです。
通い婚の終焉
通い婚は、平安時代の中期から後期にかけて、貴族の間で一般的な結婚形式でしたが、次第に衰退しました。
武士の台頭によってその役割を終えます。通い婚の衰退の原因には、以下のようなものがあります。
- 貴族の女性の地位の低下。平安時代の後期には、貴族の女性は、夫の家に入ることが多くなりました。夫の家では、夫の親族や妾や子供に対抗することが難しくなりました。貴族の女性は、自分の家や子供を守る力を失いました。
- 貴族の家族の分裂。平安時代の後期には、貴族の家族は、通い婚によって生まれた子供たちの争いによって、分裂しました。貴族の家族は、血縁関係よりも、政治的な派閥によって結ばれるようになりました。貴族の家族は、通い婚の意義を見失いました。
- 貴族の権力の喪失。平安時代の末期には、貴族は、武士の台頭によって、権力を奪われました。武士は、通い婚とは異なる結婚形式を持っていました。武士は、夫婦が同じ家に住み、夫が家長として妻や子供に対して権威を持つという、封建的な結婚形式を持っていました。武士は、通い婚を軽蔑しました。
通い婚は、貴族階級の秘め事でしたが、自由恋愛でした。武士の時代に移ると許嫁制度になり進展していきます。武士の結婚形式は、家の格や政治的な利害によって左右されることが多く、恋愛や情熱よりも義務や責任が重視されるようになります。武士の結婚は、武士道という倫理観や精神文化にも関連して行くことになります。