ノーベル賞は、文学や生理学、平和、物理学、化学、経済科学などの分野において、人類への卓越した貢献が認められた人物に贈られる名誉高き賞です。1901年から2021年10月7日現在までに、受賞者数が圧倒的に多いのは米国で、日本の13.5倍を誇ります。一方、国際舞台で他国と対等に張り合えるだけの科学技術力を有しているはずの韓国は、歴代の受賞者がわずか1人と極端に少なく、国内でもその原因を特定する動きが見られます。韓国がノーベル賞受賞者を輩出できないのは一体なぜなのでしょうか。この記事では、韓国のノーベル賞との縁遠さについて、以下の3つの観点から分析してみます。
- 人口と地域の影響
- 工業化の遅れと政府の役割
- 研究環境とイノベーションの欠如
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人口と地域の影響
ノーベル賞受賞者の数は、国の人口や地域にも関係しています。人口が多ければ、その分才能のある人材が多く生まれる可能性が高くなります。また、地域によっては、国を超えた学術交流や協力が盛んに行われている場合もあります。これらの要因は、ノーベル賞受賞に有利に働くと考えられます。
韓国の人口は約5,100万人です。これは、世界の人口の約0.65%に相当します。世界の人口に占める割合が少ないということは、ノーベル賞受賞者の数も少なくなるということです。実際、韓国のノーベル賞受賞者は、2000年に南北首脳会議を初めて実現させた功績を讃えられ、平和賞を受賞した金大中(キム・デジュン)元大統領のみで、科学技術や医学、文学などのアカデミックな分野における受賞者はいません。
一方、韓国の近隣国である日本や中国は、人口が多く、ノーベル賞受賞者も多いです。日本の人口は約1億2,600万人で、世界の人口の約1.6%です。日本のノーベル賞受賞者は、2021年10月7日現在で28人です。中国の人口は約14億人で、世界の人口の約18%です。中国のノーベル賞受賞者は、2021年10月7日現在で12人です。日本と中国のノーベル賞受賞者の数は、それぞれ韓国の28倍と12倍になります。
また、韓国は極東アジアに位置していますが、この地域はノーベル賞との相性が悪いと言われています。欧米の学者が主導するノーベル賞の選考委員会は、欧米の学術文化に馴染みのある研究を評価しやすいという傾向があります。そのため、アジアの研究者は、欧米の研究者と比べて、ノミネートされる機会が少なくなります。実際、ノーベル賞受賞者の約90%は欧米出身者です。
しかし、欧州の場合は、国ごとの人口は少ないですが、欧州には国を超えて学ぶ合う土壌があります。欧州連合(EU)は、加盟国間の学術交流や協力を促進するために、さまざまなプログラムや制度を提供しています。例えば、エラスムスプログラムは、欧州の大学生や教員が他の国の大学に留学したり、研究したりすることを支援するプログラムです。また、欧州研究評議会(ERC)は、欧州の優秀な研究者に対して、高額な研究資金を提供する制度です。これらのプログラムや制度によって、欧州の研究者は、国境を越えて自由に知識やアイデアを交換し、刺激し合うことができます。このような環境は、ノーベル賞受賞に必要な創造性や革新性を高めると考えられます。
工業化の遅れと政府の役割
ノーベル賞受賞者の数は、国の工業化の時期や政府の役割にも関係しています。工業化が早ければ、その分科学技術の発展にも余裕ができます。また、政府が科学技術の重要性を認識し、積極的に支援することも、ノーベル賞受賞に有利に働くと考えられます。
韓国の工業化は、日本や中国と比べるとかなり遅れています。日本は明治維新の時期に、中国は洋務運動の時期に、それぞれ工業化が始まりました。しかし、韓国は日中よりもスタートが遅れ、1960年代から1970年代にかけて、急速な工業化を遂げました。この時期は、すでに欧米や日本は高度な科学技術を持っていました。韓国は、これらの国に追いつくために、応用科学の分野に集中しました。その結果、韓国は、電子工学や情報技術などの分野で世界的な競争力を持つようになりましたが、基礎科学の分野では弱くなりました。ノーベル賞受賞に必要な創造性や革新性を高めると考えられます。
ノーベル賞受賞者の数は、国の工業化の時期や政府の役割にも関係しています。工業化が早ければ、その分科学技術の発展にも余裕ができます。また、政府が科学技術の重要性を認識し、積極的に支援することも、ノーベル賞受賞に有利に働くと考えられます。
韓国の工業化は、日本や中国と比べるとかなり遅れています。日本は明治維新の時期に、中国は洋務運動の時期に、それぞれ工業化が始まりました。しかし、韓国は日中よりもスタートが遅れ、1960年代から1970年代にかけて、急速な工業化を遂げました。この時期は、すでに欧米や日本は高度な科学技術を持っていました。韓国は、これらの国に追いつくために、応用科学の分野に集中しました。その結果、韓国は、電子工学や情報技術などの分野で世界的な競争力を持つようになりましたが、基礎科学の分野では弱くなりました。ノーベル賞受賞には、基礎科学の分野での長期的な研究が必要ですが、韓国はその土台を築くことができませんでした。
また、韓国の政府は、科学技術の発展に対して、十分な役割を果たしていないと言われています。韓国の政府は、短期的な研究成果にのみ集中しており、3年間に成果が見られない場合は予算が削減されたりプロジェクトが解散したりするという傾向があります。これでは、ノーベル賞受賞には不向きな環境です。ノーベル賞受賞には、長期的な視野と戦略が必要ですが、韓国の政府はそのような視点を持っていません。
日本や中国の政府は、科学技術の発展に対して、積極的に支援しています。日本の政府は、科学技術基本法を制定し、科学技術の振興に関する基本的な方針を定めています。また、科学技術振興機構(JST)や日本学術振興会(JSPS)などの機関を通じて、優秀な研究者に対して、研究資金や奨励金を提供しています。中国の政府も、科学技術の発展を国家戦略として位置づけており、国家自然科学基金委員会(NSFC)や中国科学院(CAS)などの機関を通じて、研究者に対して、研究資金や研究施設を提供しています。これらの国の政府は、科学技術の発展に対して、長期的な視野と戦略を持っており、ノーベル賞受賞には有利な環境を作っています。
研究環境とイノベーションの欠如
ノーベル賞受賞者の数は、国の研究環境やイノベーションの水準にも関係しています。研究環境が良ければ、研究者は自由に研究できるだけでなく、他の研究者とも協力しやすくなります。イノベーションの水準が高ければ、研究者は新しい発見や発明をすることができます。これらの要素は、ノーベル賞受賞に必要な創造性や革新性を高めると考えられます。
韓国の研究環境は、決して良いとは言えません。韓国科学技術院のキム・ウォンジュン教授は、「ノーベル賞関連の科学技術インフラが脆弱である」ことを、直接的な原因に挙げています。具体的には、「学者が自由に研究できる環境が整っていない」「失敗を意に介さず忍耐強く研究するファンディング制度が不十分」「誰も挑戦しようとしない研究分野への投資や基礎科学に対して、十分な投資が確保されていない」などです。他にも、研究員一人当りの研究開発費が先進国の水準より低く、多様性が重視されているにも関わらず、女性研究員が占める割合が低い点なども指摘されています。
韓国のイノベーションの水準も、高いとは言えません。韓国は、科学技術や学術の水準は決して低くないと言われています。学術論文の引用数などを評価した「SCImagoジャーナルランキング」では世界13位、世界経済フォーラムの「科学技術競争力ランキング」では世界6位など高水準を維持しています。しかし、これらのランキングは、量的な指標に基づいています。質的な指標に基づくと、韓国のイノベーションの水準は、それほど高くありません。例えば、世界知的所有権機関(WIPO)が発表した「グローバル・イノベーション・インデックス(GII)」では、韓国は2021年に世界10位となりましたが、これは2015年の5位から下落した結果です。また、米国のシンクタンクであるミルケン研究所が発表した「ベスト・ユニバーシティーズ・フォー・テクノロジー・トランスファー(BUTT)」では、韓国の大学は2020年に世界100位以内に入ったのは1校もなく、日本の大学は7校、中国の大学は4校がランクインしました。これらの指標は、韓国のイノベーションの水準が、国際的に見ても低いことを示しています。
韓国のイノベーションの欠如には、いくつかの要因が考えられます。一つは、韓国の研究者が、既存の知識や技術に依存しすぎていることです。韓国の研究者は、欧米や日本の研究者が発表した論文や特許を参考にして、それを応用したり改良したりすることに長けています。しかし、それでは、新しい発見や発明をすることはできません。ノーベル賞受賞には、既存の知識や技術にとらわれない、独創的な思考が必要ですが、韓国の研究者はそのような思考を持っていないと言われています。
もう一つは、韓国の研究者が、リスクを恐れていることです。韓国の研究者は、失敗を避けるために、安全な研究テーマや方法を選びがちです。しかし、それでは、革新的な研究をすることはできません。ノーベル賞受賞には、失敗を恐れずに、挑戦的な研究テーマや方法を選ぶことが必要ですが、韓国の研究者はそのような選択をしないと言われています。
まとめ
韓国がノーベル賞受賞者を輩出できないのは、人口と地域の影響、工業化の遅れと政府の役割、研究環境とイノベーションの欠如などの理由が考えられます。これらの理由は、韓国の科学技術や学術における創造性や革新性を低下させています。韓国がノーベル賞大国になるためには、これらの課題を克服することが必要です。具体的には、以下のような対策が考えられます。
- 人口と地域の影響に対しては、国際的な学術交流や協力を促進することで、欧米の学術文化に対応できるようにすることです。また、人口が少ないことを補うために、才能のある人材を発掘し、育成することです。
- 工業化の遅れと政府の役割に対しては、基礎科学の分野にも注力することで、応用科学の分野だけでなく、全体的な科学技術の水準を向上させることです。また、政府は、科学技術の発展に対して、長期的な視野と戦略を持ち、研究者に対して、十分な支援を行うことです。
- 研究環境とイノベーションの欠如に対しては、研究者が自由に研究できる環境を整えることで、既存の知識や技術にとらわれない、独創的な思考を促すことです。また、研究者がリスクを恐れないようにすることで、挑戦的な研究テーマや方法を選ぶことを奨励することです。
韓国がノーベル賞を取れないのはなぜかという問いに対して、この記事では、その理由と対策を分析しました。韓国は、科学技術や学術の分野で、多くの可能性を秘めています。韓国がノーベル賞大国になるためには、これらの可能性を実現することが必要です。そのためには、韓国の研究者や政府は、ノーベル賞受賞に必要な創造性や革新性を高めるように環境整備が求められます。韓国がノーベル賞を取れる日が来ることを期待しています。
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