日本大学アメリカンフットボール部が廃部になったことは、多くの人に衝撃を与えました。この部は、複数の部員が違法薬物事件で逮捕されたことなどを受け、2023年12月15日の大学の理事会で廃部が決議されました。しかし、この決定には、法曹界やスポーツ界の識者から疑問の声が上がっています。廃部は本当に必要だったのでしょうか?違法薬物事件の真相と今後の展望について推察します。
◆日大アメフト部の廃部経過
▽8月5日 警視庁が部員の北畠成文容疑者を逮捕。同部は無期限活動停止処分。
▽同25日 東京地検が麻薬取締法違反(所持)の罪で、北畠容疑者を起訴。
▽9月1日 日大が8月10日に解除した処分を撤回、再び部を無期限活動停止に。
▽10月16日 麻薬特例法違反(大麻譲り受け)の疑いで別の4年生部員が逮捕。
▽11月27日 麻薬特例法違反の疑いで3人目の部員逮捕。
違法薬物事件の経緯と現状
日大アメフト部の違法薬物事件は、今年7月に発覚しました。当時、部員の一人が大麻を所持していたことが判明し、その後、他の3人も覚醼剤や大麻を使用していたことが摘発されました。これらの部員は、麻薬取締法違反の罪に問われています。最初に逮捕された部員は、沢田康広副学長が事件をもみ消してくれると期待していたと裁判で証言しましたが、部関係者はそのような発言はなかったと否定しています。また、中村敏英監督は、部員に対して自首を促したと主張していますが、大学側は認めていません。
違法薬物事件の発覚は、日大アメフト部にとって大きな打撃となりました。日大アメフト部は、日本の大学アメフト界の名門として知られており、甲子園ボウルやライスボウルなどのタイトルを数多く獲得してきました。しかし、この事件により、部の活動は無期限に停止され、公式戦への出場資格も剥奪されました。部員や関係者は、大きなショックと悔しさを感じていることでしょう。
違法薬物事件の捜査は、まだ終わっていません。警視庁は、これまでに2度、アメフト部の学生寮を家宅捜索しました。また、部員の携帯電話やSNSのやりとりなどから、部内での薬物の流通や使用の実態を解明しようとしています。さらに、部員以外の関係者や卒業生にも薬物の関与がないかを調べています。今後、新たな逮捕者や疑われる人物が出る可能性もあります。事件の全容が明らかになるまで、日大アメフト部の行方は不透明です。
廃部の理由と批判
日大は、違法薬物事件を受けて、アメフト部の廃部を決めました。その理由として、大学側は「集団的、常習的」な薬物使用があったと指摘し、部の管理体制に問題があったと判断しました。しかし、この決定には、批判が相次いでいます。一つは、廃部は連帯責任であり、個人の罪を部全体に負わせるのは不当だというものです。もう一つは、廃部は部員の人権を侵害するというものです。部員の代表者は、部の存廃を議論する理事会に出席し、存続を訴えましたが、聞き入れられませんでした。部員や保護者は、林真理子理事長や酒井健夫学長に直接説明を求めましたが、応じられませんでした。
廃部の決定は、日大の組織的な問題を反映しているとも言えます。日大は、違法薬物事件の発覚後、第三者委員会を設置して調査を行いましたが、その報告書は、大学のガバナンスの機能不全を浮き彫りにしました。報告書によると、沢田副学長は、部員から大麻を押収した際に、警察に通報せずに自己処分にとどめたり、林理事長や酒井学長に対して情報を隠したりしたとされます。また、林理事長や酒井学長も、沢田副学長の判断を追認したり、報告書の公表を遅らせたりしたとされます。これらの行為は、社会の信頼を失墜させるものであり、大学の責任者としての資質を疑われます。
日大の執行部は、違法薬物事件への対応について、文部科学省から厳重注意を受けました。また、日大の学生や教職員からも、執行部の辞任を求める声が上がりました。その結果、日大は、酒井学長と沢田副学長の辞任を決めました。しかし、林理事長は、減給の処分にとどめました。これに対して、沢田副学長は、林理事長に対してパワハラを受けたとして、損害賠償を求める訴訟を起こしました。日大の執行部は、内紛に陥り、統治能力を失っていると言えるでしょう。
今後の展望と課題
日大は、廃部としたアメフト部の部員らに対し、新たな部を作り、年明けにも活動を始めると説明しました。この新部は、現在と同じく予算面の優遇を受け、推薦入学が可能な競技スポーツ部となる方向性も示されました。しかし、この説明には、部員や保護者から「それなら(既存の部の)継続と何が違うのか」と憤る声が上がりました。また、新部の監督やコーチ、選手の選考基準などはまだ明らかにされてされていません。
新部の設立には、日本学生アメリカンフットボール協会(日学協)や関東学生アメリカンフットボール連盟(関学連)などの承認が必要ですが、その条件や手続きも不明です。日大アメフト部の再建には、まだまだ課題が多いといえます。と言うよりも大学側の対応が世間一般的に理解できないことが多く、それがこの問題のボトルネックになつていることを、大学側が感知していない鈍感さが、一番心配です。
まとめ
日大アメフト部の廃部は、違法薬物事件の責任を問うための措置でしたが、その正当性や適切性には疑問が残ります。部員や保護者は、大学側の対応に不満を持っています。新たな部を作るという方針も、具体的な内容が不明確で、納得できるものではありません。日大アメフト部の今後の展望は、不透明なままです。日大は、部員の人権や声を尊重し、公平な対応をするべきだと思います。「伝統を守り、人を育成し、社会に貢献する」この考えを日大首脳陣が理解できないのが、今回の騒動の根本的な原因です。
『罪を憎んで人を恨まず』
罪を犯した人を憎むのではなく、その人が罪を犯すに至った背後にある事情や背景を理解し、その人を非難せずに罰すべき罪を憎むべきだという考え方を表しています。この教えは、人間関係や社会において対立や敵意を減少させ、寛容と理解を促進する重要な原則とされています。